建物の冷暖房負荷を短時間で検討する

この記事ではLadybug Toolsを使った冷暖房負荷を短時間で検討する方法を紹介します。
(動作環境 Windows10 / Rhino7 / Ladybug Tools1.4.0 )

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スタディ例

Ladybug Toolsにはエネルギーシミュレーションを短時間で実行して、Rhino上で簡単にスタディできる便利な機能があります。

下の動画のように、窓面積比率をNumber Sliderで変えた際に解析結果も数秒で変わり、傾向を把握できます。
Ladybug Toolsでエネルギーシミュレーションを行う場合、OpenStudioを介して計算エンジンであるEnergyPlusで解析を行うのですが、今回使用したコンポーネントはそういったステップを省略した機能となっており、短時間で解析ができます。

こちらが使用したGrasshopperのスクリプトです。

シミュレーションモデルの作成

はじめに解析モデルのセットアップを行います。A-1~Cの順で行っている操作を補足しています。

STEP
A-1. 室モデルの作成

Rhino上で作成した直方体をGeometry PipelineコンポーネントでGrasshopperに取り込み、HB Room from Solidコンポーネントで室モデルを作成します。

STEP
A-2. 用途設定

こちらで室用途を設定します。今回はデフォルト設定内、OpenOffice用途を選択しました。用途を選択すると、用途に応じた室の人や照明などの内部負荷やスケジュールが設定できます。
※A-2の一連のコンポーネントを設定しなくても、デフォルト値で解析できます。

STEP
B. 窓の作成

HB Apertures by Ratioコンポーネントで、南面の窓比率をNumber Sliderで変更できるモデルとしました。

STEP
C. 庇の作成

HB Louver Shadesコンポーネントで庇の長さをNumber Sliderで変更できるモデルとしました。

窓面積の設定に関する補足

窓面積の設定は、壁面積に対して0.2、0.4、0.6、0.8の割合で可変させるために、Number SliderのExpressionで以下の設定を行いました。この設定により、Number Sliderが1だと0.2、2だと0.4…と出力されます。

エネルギーシミュレーション+データのグラフ化

続いて、エネルギーシミュレーションの実行、データのグラフ化を行います。

STEP
A. エネルギーシミュレーションの実行

クイックスタディを行うために、HB Annual loadsコンポーネントを用いて解析の設定を行います。

※クイックスタディを目的としたコンポーネントのため、年間負荷計算を目的とした使用を推奨・計算誤差(最大5%)がある点、詳細な解析はHB Model to OSMコンポーネントの使用、といった注記があります。詳細についてはこちらに記載があります。

BooleanトグルをTrueにすると解析が回ります。Trueにした状態で、窓面積の設定を行ったNumber Sliderコンポーネントを変えると、再度解析が行われて結果が変わります。

STEP
B. グラフ化

LB Monthly Chartを使って、月別のバーチャートを作成します。

Excelへのアウトプット

HB Annual Loadsコンポーネントは短時間で解析が行えて便利なのですが、計算結果が残りません。そこで、以下のコンポーネントを使ってExcelへ出力できます。

Write To Excel、Write OptionsコンポーネントはTT Toolboxプラグインを使用しています。プラグインはこちらから入手できます。

赤囲み部分以外は別途excelで用意しています。
窓面積の設定を行ったNumber Sliderの操作にあわせてexcelに数値が出力される仕様としています。

  • Write To Excel コンポーネント : BooleanトグルをTrueにするとexcelに出力できます。Dataインプットに接続したHB Annual Loadsコンポーネントのtotal_loadアウトプットの値がexcelに出力されます。
  • Write Optionsコンポーネント : こちらのコンポーネントで、用意したexcelのファイルパス設定、窓面積の設定を行ったNumber Sliderの入力にあわせて、値を書き出すためのexcel内の行列の位置を調整しています。

おわりに

Ladybug Toolsを使った冷暖房負荷のクイックスタディ方法を紹介しました。クイックスタディで計画建物の変数による負荷への影響の傾向をつかみ、ある程度案を絞ったうえで詳細なエネルギーシミュレーションを行う、といったプロセスへの活用が期待できます。

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