気象データを用いた自然換気のポテンシャル分析

この記事では、Ladybug Toolsを使った自然換気のポテンシャル分析を紹介します。
(動作環境 Windows10 / Rhino7 / Ladybug Tools 1.4.0)

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自然換気のポテンシャル分析

Ladybug Toolsを使って、年間の気象データをもとに自然換気のポテンシャル分析を行う方法を紹介します。今回、気象データは東京を用いました。気象データについては以下の記事を見てみてください。


今回、空気温度、エンタルピーを条件に自然換気可能な時間を判断して年間のヒートマップを作成します。こちらのヒートマップより、4-6月、9-11月の中間期が自然換気に適していることがわかります。月別の割合などの分析にも活用できます。

Grasshopperスクリプトの準備

今回の解析に使用したGrasshopperスクリプトはこちらです。
気象データの読み込み→気象データの空気温度、エンタルピーから自然換気可能な時間を判断→自然換気可能な時間に関するデータセットの作成→ヒートマップでグラフ化という手順で行っています。

外気空気温度、エンタルピーを対象とした条件設定

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① 空気温度

①の部分で空気温度について、指定した条件に合う時刻の抽出を行っています。LB Apply Conditional Statementコンポーネントを使って該当するデータを取り出すことができます。今回は、16<a<25を_statementインプットに入れることで、空気温度が16~25℃のデータを取り出します。このままだと空気温度がアウトプットとなるので、LB Data DateTimesコンポーネントで年間8760時間のどの時刻かわかるように変換します。

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② エンタルピー

②の部分でエンタルピーについて同様の操作を行います。エンタルピーは気象データには含まれていないので、LB Humidity Metricsコンポーネントを使ってエンタルピーのデータセットを作成します。今回は、a<52.9と設定することでエンタルピーが52.9kJ / kg(26℃50%相当)以下のデータを取り出します。その後の操作は①と同様です。

STEP
③空気温度、エンタルピーの条件の重ね合わせ

空気温度が16~25℃、エンタルピーが52.9kJ / kg以下のどちらの条件も満たすようにしたいので、GhPython Scriptコンポーネントでリスト操作を行います。このコンポーネント内には以下のスクリプトを記載しています。

a=sorted(set(x)&set(y))

set関数で重複する時刻のインデックスを取得、sort関数で数字の昇順となるように調整しています。

また、GhPython Scriptコンポーネントのx、yインプットを右クリックして、List Accessに変更します。

なお、LB Apply Conditional Statementコンポーネントで取り出した空気温度のデータをヒートマップ化するとこちらです。このままでも分析に活用できると思いますが、今回はエンタルピーも組み合わせるためにLB Data DateTimesコンポーネントを活用しています。

自然換気のポテンシャルに関するデータセットを作成

上記のプロセスで自然換気可能な時間の抽出ができたので、ヒートマップ化に使うデータセットを作成します。

STEP
自然換気可能な時間に関するリストの作成

Repeat Dataコンポーネント、Replace itemsコンポーネントで、自然換気可能な時間に関するリストを作成しています。今回は、自然換気に向かない時間を0、自然換気可能な時間(=空気温度が16~25℃、エンタルピーが52.9kJ / kg以下の時刻)を1とする年間8760時間のリストとしました。

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ヒートマップ用のデータセットの作成

Ladybug Toolsのヒートマップで使用する年間8760時間のデータセットは、ヘッダー+8760時間のリストで構成されています。上記で8760時間のリストは準備したので、ヘッダーに関するデータを作成してからデータセットを作ります。

ヘッダーの作成
LB Construct Data Typeコンポーネント、LB Construct Headerコンポーネントで、自然換気可能な時間に関するヘッダーを作成します。LB Construct Data Typeコンポーネントのcategories_インプットを活用することで、数字以外の凡例表記をヒートマップで表示できます。

Ladybug Toolsで使用するデータセットの作成
LB Construct Dataコンポーネントで、作成したヘッダーと年間8760時間の数値をもとに、ヒートマップに活用するデータセットを作成します。

自然換気のポテンシャル分析

以上の流れで作成したデータセットをLB Hourly Plotコンポーネントにつなげることで、ヒートマップが作成できます。

作成したデータより、今回想定した自然換気可能な条件(空気温度が16~25℃、エンタルピーが52.9kJ / kg以下)を年間で1,895時間(年間約21%相当)満たしていることがわかります。

おわりに

今回は、空気温度、エンタルピーから自然換気のポテンシャル分析を行いましたが、露点温度や絶対湿度なども条件に活用することができます。そのため、放射パネルなどの放射空調と自然換気を併用したい場合は、露点温度を条件とすることで、放射パネルの結露が生じることなく自然換気できる時間がどの程度あるか、といった分析にも活用できると思います。

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