光環境の指標sDA、ASEを解析する

この記事では光環境の指標であるsDA、ASEをLadybugToolsで解析する方法を紹介します。
(使用ツール:Windows10/Rhinoceros7/LadybugTools1.2)

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参考としたwebサイト

LadybugTools1.2でのsDA、ASEの解析方法については、下のLadybugToolsのフォーラムの内容を参考にしました。後ほど紹介するGrasshopperスクリプトも概ねこちらをベースにしています。


プラグインとして、HumanMeshEditが使われていますので、foo4Rhinoからインストールする必要があります。この記事で紹介するスクリプトも同じプラグインを使用しました。

discourse.ladybug.tools(LadybugToolsのフォーラム)
https://discourse.ladybug.tools/t/sda-ase-with-lb-1-2-0/14435/5
※GHスクリプトもダウンロード可能です

sDA、ASEについて

LadybugToolsによる解析を紹介する前に、sDA、ASEについて紹介したいと思います。sDA、ASEはLEED認証の光環境のパートに含まれていることもあり、最近は耳にすることが増えてきている印象です。

sDA(Spatial Daylight Autonomy)
空間における昼光利用に対する年間指標
今回はsDA300lux/50%(300lux以上となる年間の時間割合が50%を超える空間のパーセンテージ)を用いました。
値が大きいほど、昼光を有効活用できているとみなせます。

ASE(Annual Sunlight Exposure)
空間における日射による不快感が生じる可能性を示す年間指標
今回はASE1000lux/250h(1000luxを超える時間が年間で250時間以上となる空間のパーセンテージ)を用いました。
値が小さいほど、日射による不快を抑えられるとみなせます。


紹介するsDA、ASE解析の注意点
sDA、ASEの定義は、IES LM-83-12 Approved Method: IES Spatial Daylight Autonomy (sDA) and Annual Sunlight Exposure (ASE)に記載されています。
今回紹介しているGHスクリプトも上記のメソッドに完全に対応しているわけではない(ブラインド制御の考慮など)ので、LEED認証で活用する場合は注意が必要です。sDA、ASEを解析できるツールとしては、RevitのLighting Analysis、ClimateStudio、Cove.tool、IESVEなど多くのツールがあります。

解析手順

今回の解析で使用したGrasshopperスクリプトはこちらです。上段でsDA、下段でASEの解析を行っています。
こちらに記載しているリンクを参考にしています。

解析モデル

解析モデルはこちらを用いました。北・東・南に窓、南には横庇があります。
sDA解析では、Honeybeeモデル→Radianceを計算エンジンとして解析するため、こちらのスクリプトでモデル設定をしています。部屋のボリューム、窓、シェードはRhinoでモデリングしたものをGrasshopperに取り込んでいます。

モデル
モデル部分のGHスクリプト

sDA解析

sDA解析はHoneybeeモデル構築→解析グリッド設定→解析(計算エンジンはRadiance)→解析結果の表示という手順です。

下のキャプチャーにある、解析設定を行うHB Annual Daylightコンポーネントについて補足します。

このコンポーネントのthreholdsインプットでDaylight Autonomyを算出照度(lux)を設定しており、今回は300luxを設定しています。設定を変えたい場合はこちらで変更できます。

また、このコンポーネントのscheduleインプットにて対象とする日時を指定しており、今回はAM8:00~PM6:00を設定しています。

こちらが解析結果です。窓が多くある解析モデルのため、sDAの結果は97.8%となりました。

sDAの解析結果

なお、このGHスクリプトのキャプチャーの水色部分で、300luxを超えている時間割合が50%を超える部分を太枠表示しています。こちらの機能は、LadybugのLegacyバージョン(旧バージョン)ではありましたので、今後コンポーネントとして実装されるのではと思います。

ASE解析

ASE解析は、sDAのようにRadianceを計算エンジンとしておらず、気象データであるepwファイルの数値とLadybugの機能により算出しています。

そのため、Honeybeeで構築するモデルではなく、解析モデルのジオメトリを活用するため、下のコンポーネントでジオメトリを取り出しています。(物性を持たずに解析を行うため、窓ガラス部分をホールにするのが大きな違いです。)

Radianceを計算エンジンとしていないため、下のスクリプトで設定照度、ガラス透過率を設定して概算します。

下のイメージが解析結果です。南、東の窓ガラス近くで1000luxを超える時間が多く、ASEの結果は19.5%でした。ASEの値は、10%以下が推奨されるため、この解析モデルでは日射遮蔽に課題があることがわかります。

ASEの解析結果

sDA&ASE解析結果

sDA、ASEの解析結果を見てみると、窓が大きく確保できていることから十分な照度を確保できている(sDAが良い結果)一方で、1,000luxを超える時間が多くあり一部の場所で不快な光環境となっている(ASEが悪い結果)ことが読み取れました。そのため、窓サイズや遮蔽方法を検討していくと、よりよい光環境をつくれると考えられます。

このように、sDAとASEの双方を解析して光環境を把握することで、バランスのとれた光環境の検討に活用できます。

おわりに

光環境の指標はsDA、ASE以外にもありますので、他の指標を活用する方法も大いにあります。今後、他の記事にて別の指標も取り上げたいと思います。

最後に、光環境の指標についてわかりやすくまとまっているwebサイトを紹介したいと思います。IESVEツールによる光環境の解析例をもとに、様々な指標を説明されています。

IES社による記事 (TEN Key Daylight & Electric Light Metrics)
https://www.iesve.com/discoveries/article/3813/ten-key-daylight-and-electric-metrics

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